"
あいつは三十歳の子供
いまだに定職持たず
やりたいことはあるけれど
いまだに芽が出ない
のらりくらりやっていて
いまだに収入不安定
あいつは三十歳の子供
好きな人と暮らしたら
いつしか子供が出来ちゃった
結婚なんてと言ってたが
いつしか籍も入れちゃって
気がつきゃ家庭を築いてた
あいつは三十歳の子供
一生アパート暮らし
くにの親は隠居の身
貯金なんてまるでない
国民年金入ってない
風のように生きたいだって
あいつは三十歳の子供
大人になりたくないだって
子供のままでいたいって
月日はどんどんたって行く
脳みそがかたくなって来て
世の中見えなくなって来た
これから人生どうするの
これから人生どうするの
中川五郎 - 三十歳の子供
これが聞きたくって、五郎さんの『また恋をしてしまったぼく』を買ってきた。五郎さんは訳書(歌手というより、いまやチャールズ・ブコウスキーの翻訳で有名だ)しかなくて、レコードを実は持っていない。
初めてこの歌を聞いたのは出番待ちの舞台袖だった。ぼくらの直前が、中川五郎&ロメオズだったのだ。あいつは三十歳の子供――延々と続くコーダで、繰り返し繰り返し声を張り上げる。でかい音、凄い、まさにパンクだ。

これから人生どうするの――というリフレイン。三十代はじめだったぼくは、さすが上手なパスティーシュだな程度にしか思えなかった。普通の社会人だったし。それが今ではどうだ。ぐさぐさ胸が痛んで仕方がない。
待ちながらストレッチをしたり、水筒のお茶に口を付けたりしていたら、強張ったカオをしていたのか、舞台監督の福岡風太さんが声を掛けてきた。「何も気にすることなんかないんだ。思いっきり楽しんできてよ!」。確信に満ちた声で微笑みかけてくれた。
CDに入っていた解説によると、最近の五郎さんは六十歳を越えてなお、精力的に歌い続けているという。テーマは、やはり極私的な、その年齢にいたって見え始めた性と生と死、そして老い。『まだ恋をしているぼく』こそが、これから人生どうするのという問い掛けへの答だと、ぼくにはそう思える。
(via grupostoneflower)